「逃げる場所がなかった。帰る場所がなかった。」
試合後、バックステージで「這い上がってやろうと思わせたものは何だ」との記者の質問に答えたセリフ。
絶望的な不自由さからスタートした真壁のプロレス人生。
不遇だったから、不自由だったからこそ、色々なことを受け入れざるを得なかった。
真正面から対抗し、誰はばかることなく打ち破るようなチャンスは与えられなかった。
しかし、真面目な真壁はそうやって何もかも取り込んで行き、雑多な情念と反骨精神とが混じり合って、ベビーともヒールとも言えない魅力的なキャラクターができあがった。
そして満を持してのIWGP初戴冠。
若手時代、大谷に「もっと喋れ」とアドバイスを受けた真壁。
それを忠実に実行し、当時は「試合時間より試合後のコメントの方が長い」と言われた。
そんな努力も今開花している。
試合後のリング上からの勝利者インタビュー。
「俺はアイツの生き方が嫌いで全否定していた。アイツは俺の生き方が嫌いで全否定していた。でもそうでなきゃプロレスは面白くないだろ。」
まるでこの瞬間を待っていたかのような言葉だった。
入門以来14年間、数え切れないほどのものを受け入れてきた真壁。
最後に残されていたことは、自分も他者も、共に許容すること。
相手を否定する自分も受け入れ、自分を否定する相手も受け入れ、いつの間にかプロレス人生のみならず、人格形成上の理想形と言われる全方面OKの境地にたどりついていた。
360度OK,否定することをも許容する。
マスタークラスか、はたまたウルトラCか。
不自由からスタートした真壁が、とうとう究極の自由を手に入れた。
ナイルブルー。